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こころ / 2015

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第4章 ベトナムと石狩と旭川

 「石狩に船が座礁してるんだって。」友達が教えてくれた。へーそんなことあるんだなーとその時はなんとなく話を聞いていた。家に帰り、夜中になってから、その船がベトナムの船だと知った。大切な原風景をみつけた石狩。そこから川でつながった旭川。まさかもう一つの大切な場所ベトナムが、海から流れ着いた船で繋がるなんて思ってもいなかった。超個人的大事件が石狩で起こっていた。

 ニュースでは、その船を沖に引っ張り出すサルベージ作業が進んでいると報じている。今にも救出されてしまうかもしれない。すぐに行かなくては。今しか撮れない。そう意識して写真を撮ったことは不思議とあまり無なかったように思う。写真を撮らなければ。これは逃してはいけない。

 しかし、そう思ったのは真夜中。どうやって石狩へ行けばいいだろう。私は車を持っていない。レンタカーを借りようにも、営業は既に終わっている。気持ちばかり焦ってしまう。そこで、困った時いつもなにかと力になってくれる友人に連絡する。その友人は、宇宙からやってきたピンクの仔熊「コアックマ」というご当地キャラの運営をしている。その友人からピンクのボディーのコアックマ号を借り、石狩へ向かった。すぐに躊躇なく貸してくれたことが嬉しかった。

 現場はすぐに見つかった。交通規制が入っていて車で近づくことはできなかったが、遠くの暗闇の中にぼんやり船を照らすライトが見えた。船はまだ座礁したままだ。しかし暗くてよく見えない。写真にも全貌は映らない。そこでコアックマ号の中で夜明けを待つことにした。

 時間が経ち、外が、うっすらと明るくなってきた。仕事の出勤時間も近づいている。急いで札幌に帰らなければいけない。車を降り、柵を乗り越え、船の近くへ向かった。どんどん大きくなっていく船を見ながら、なんだかとても感動していた。そしてシャッターを切る。「これだよ!」と思わず叫んだ。一体何がこれなのかは全然わからなかったけれど、叫びながら、走り周って汗だくになりながら写真を撮った。限られた時間の中、超個人的大事件を、時間の許すかぎり、私は撮り続けた。

 

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